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2012年12月16日日曜日

GALLERY GOHONがクロージング



 201210月をもってGALLERY GOHONが活動を終了した。GALLERY GOHON金原研二鈴木雅明鈴木里菜諏訪俊童高橋遥田口美穂茶谷麻里永田浩子山内亮典吉田葵という若手作家10名による自主運営スペースで、201011月から2年間限定でスタート。参加メンバーの個展やグループ展にとどまらず、外部作家を迎えての企画展を精力的に行ってきた。2年間に開催した展覧会は、なんと341013日のクロージングイベントでは、これまでの活動記録の上映や、消しゴムはんこを使ったブックカバー製作のワークショップ、餃子パーティが行われ、多くの人でにぎわった。

 活動終了を惜しむ声も少なくないが、メンバーは「仕事をしながら自分の制作とスペースの運営を両立していくのはつらい時もあったが、2年間と期間が限定されていたからできた。展覧会のサイクルが早く忙しかったが、各々が企画にもかかわり、自分が見たいと思う展覧会が開催できた」(田口)、「外部の作家を迎えて展示をすることで、自分自身の展示の勉強になったし、GALLERY GOHONの活動がほかの作家やアート関係者とつながるきっかけになった」(金原)と振り返る。また、企画にかかわるメリットを「作家として自分が抱える問題意識から出発し、それを展覧会という形にしていくことで、問題意識と客観的に向き合うことができた。それは、今後の自分自身の制作や発表する時に生かされると思う」(田口)と語った。

 アーティストによる自主運営スペースは、制作と運営の両立が難しかったり、メンバー間に意識のズレが生まれたりと活動が先細りになって終息する場合も少なくないが、あえて期間を限定したことで最後まで疾走し続けたGALLERY GOHONのメンバー。2年間のスペース運営の経験は、今後それぞれが制作を続ける中で、あらためて問い返されていくことだろう。

2012年9月15日土曜日

ジャズのまち岡崎でアートとジャズのイベントが開催



来年行われる「あいちトリエンナーレ2013」でも会場の一つとなる岡崎のまちなかで、現代美術とジャズのイベント「岡崎ART&JAZZ 2012がこの秋に開催される。これは、あいちトリエンナーレ地域展開事業の一つで、岡崎の市街地で行われる初めての現代美術展。岡崎城を擁する岡崎公園や昭和の雰囲気を残す百貨店、岡崎シビコ、昭和初期の洋風邸宅、岡崎市旧本多忠次邸などに、1314名の作家の作品が展示される。

ところで、岡崎がジャズのまちだということをご存じだろうか? 岡崎市図書館交流プラザには、内田修ジャズコレクション展示室があるが、岡崎に生まれ、市内で外科病院を開業していた内田氏は、ジャズのレコード収集するかたわら、ジャズクラブ「ナゴヤホットクラブ」や「ナゴヤ・ヤマハジャズクラブ」を主宰するなど、日本ジャズ界の発展に大きく貢献した人物。展示室には、内田氏の足跡とジャズ界への功績をパネルで紹介するほか、レコードやテープの音源試聴コーナー、ジャズミュージシャンからのメッセージ視聴コーナー、また内田氏が病院内に設えた「ドクターズ・スタジオ」の再現コーナーがある。

会期中にはアーティストトークやワークショップのほか、岡崎ならではのジャズイベントも盛りだくさん。歴史のある建物やまちなみも楽しめそうだ。


岡崎ART&JAZZ 2012
会期:2012111日(木)~122日(日)
会場:東隅櫓(岡崎公園内)、岡崎シビコ屋上・6階、岡崎市旧本多忠次邸(東公園)、岡崎市図書館交流プラザ、市街地各所
時間:10:0017:00
111日は13:0017:00、岡崎市旧本多忠次邸は9:0017:00
休館日:岡崎シビコは1115日休業、岡崎市旧本多忠次邸は月曜休館、岡崎市図書館交流プラザは水曜休館
観覧料:無料
岡崎市旧本多忠次邸は一般200円、小中学生100
その他有料イベントあり
参加作家:平田五郎、斉と公平太、淺井裕介、木村崇人、岩崎貴宏、D.D.(今村哲+染谷亜里可)、平川祐樹、ふるかはひでたか、松永久彦、ヒネマガリ三立方(ふるかはひでたか+武藤隆)、木藤純子、小柳裕、山本一弥

2012年6月14日木曜日

アートな夏旅へGO!

「夏といえば芸術祭!」とばかりに、毎年国内のどこかで芸術祭が行われている昨今。今年は、夏休みを利用して、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ20127/299/17)、開都にいがた 水と土の芸術祭20127/1412/24)などを巡る旅を計画されている方も多いだろうが、近場で日帰りできるアートの旅はいかがだろうか。


尾野訓大、福津宣人、松永久彦「佐久島 遍路展」
会期/開催中~2012716日(祝)
会場/弁天サロン内ギャラリー(愛知県西尾市佐久島)
交通/佐久島西港渡船場より東へ徒歩4

2010年から行われてきた、島内に数多く点在する弘法大師像の朽ち果てた祠を建築家や学生が復活させる「佐久島弘法プロジェクト」により、今年4月に復活した佐久島弘法八十八ヶ所巡りを記念して開催される、「遍路」をテーマにしたグループ展。島内各所に設置された常設作品を回る「佐久島アート・ピクニック2012」、佐久島弘法八十八ヶ所巡りのルートを歩く「佐久島弘法巡り」の2つのスタンプラリーも開催中。荒木由香里《星を想う椅子》など3点が加わり、19点となった常設作品は見ごたえ十分。


きそがわ日和2012夏秋
会期/2012年8月26日(日)~9月2日(日)
会場/旧太田宿周辺(岐阜県美濃加茂市)
交通/JR太田線美濃太田駅南口より南へ徒歩10

2010年から岐阜県美濃加茂市で開催されているアートイベント。今年5月に美濃加茂市民ミュージアムで行われたきそがわ日和2012春「Sound on Film in Night Museum」では、林海象監督によるサイレントフィルム「夢みるように眠りたい」に現代音楽の生演奏をつけて上映。夏秋では、旧太田宿の街道沿いに並ぶ店舗や空き家を会場にした、現代アートの展覧会が予定されている。


ヴァンジ彫刻庭園美術館「開館10周年記念展 庭を巡れば」
会期/開催中~2012831日(金)
会場/ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1
交通/JR東海道線三島駅北口より無料シャトルバスあり

ヴァンジ彫刻庭園美術館は、イタリアの現代具象彫刻家、ジュリアーノ・ヴァンジの1960年以降の作品を常設展示する美術館。開館10周年記念展では、美術館の特徴である「庭」をテーマに、奈良美智や杉戸洋、村瀬恭子ら19組の日本の現代美術作家の作品が紹介されている。敷地内は、四季折々に咲くクレマチスが楽しめるクレマチスガーデン、IZU PHOTO MUSEUMなど、見どころが盛りだくさん。

2012年3月16日金曜日

震災から一年、アートの力とは


未曾有の被害をもたらした東日本大震災からちょうど一年。復興を支援するために自分に何ができるかを問い返すなかで、アートの関わる人々の中に「アートにできることは何か?」という議論が沸き起こった一年でもありました。皇室の方が被災地を訪問し、避難生活を送る人々に温かな言葉をかけたり、ミュージシャンが歌や音楽で人々を元気づけたりといった場面がメディアに流れるたびに、アートにしか成し得ない支援が見つからず、無力感を覚えないではいられなかったというアーティストやアート関係者も少なくなかったのではないでしょうか。
残念ながら、アートには歌や音楽のような即効性はありません。また、人々の気持ちを癒したり、元気づけたりするようなものばかりではありません。むしろ、津波や原発の恐怖を思い出させたり、大切な人や物を失った喪失感をよみがえらせたりと、逆効果を及ぼすような作品の方が多いかもしれません。
でも、それこそがアートの力ではないかと思うのです。震災の恐怖や喪失感を乗り越えるには、歌や音楽でひと時悲しみを忘れ、気持ちをリセットすることも大切ですが、アートをとおして震災の記憶と向き合い、悲しみや苦しみを感じたり、時には怒りに震えたりする経験が、私たちが自然の一部として生きていることを再認識させ、生きる力につながっていくのではないでしょうか。
来年の夏から秋に開催が予定されている「あいちトリエンナーレ2013」のテーマは「揺れる大地われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」。芸術監督の五十嵐太郎さんはこのテーマについて「日本が大きな試練を迎え、転換を迫られるなかで、このトリエンナーレは(中略)先端的なアートの動向を紹介する第一回の長所を継承しつつも、荒波を越えていくための新機軸や時代性を織り込んでいきます」「当たり前だと思っていた根拠を失い、既成の枠組が変動するとき、自らが踏みしめる大地=アイデンティティがどうなっているかを確認する必要があります」と語っています。「楽しい」「おもしろい」だけではないアートの力を実感させてくれる機会となることを期待したいと思います。

※あいちトリエンナーレ2013の記者発表の模様がUstreamで生放送されます

あいちトリエンナーレ2013記者発表
2012329日(木)16:0017:00
http://www.ustream.tv/channel/aichitriennale-ch1